for fontplus
Illust 3
Illust 1
「毎日使う」が一番の手入れ! 誤解だらけの漆器との付き合い方と、本物の見極めポイント
2026.02.10
「毎日使う」が一番の手入れ! 誤解だらけの漆器との付き合い方と、本物の見極めポイント
今回は、漆器にまつわる誤解を解きつつ、冬こそ使いたい漆器の実力と、失敗しない選び方を紐解きます。漆器は木と漆の高い断熱性により、手には優しく中身は冷めにくい特性を持つ。
「毎日使う」が一番の手入れ! 誤解だらけの漆器との付き合い方と、本物の見極めポイント

一年で一番寒い時期、器の「温度」を意識していますか?

大寒を過ぎ、寒さがもっとも厳しい季節となりました。朝起きるのが辛いこの時期、湯気の立つ温かいお味噌汁やスープは、身体だけでなく心まで解きほぐしてくれるようです。

前回は、焼き物における「陶器(土)」と「磁器(石)」の違いについて解説しました。今回は、日本の食卓に欠かせないもう一つの主役、「漆器」についてお話しします。

「漆器は高級品だから、お正月や来客時しか使わない」「管理が難しそう」。そんなイメージを持って、食器棚の奥にしまい込んでいませんか?

実は、漆器にとって一番良くないのは「使わないこと」なのです。今回は、漆器にまつわる誤解を解きつつ、冬こそ使いたい漆器の実力と、失敗しない選び方を紐解きます。

なぜ、料亭のお椀は「熱くない」のか

陶器や磁器のお茶碗に熱々のご飯や汁物を入れたとき、「あちち!」と手を引っ込めた経験はありませんか?

一方で漆器のお椀は、できたての汁物を注いでも、手で持つとほんのり温かい程度。けれど口をつけると、中身はしっかりと熱いまま保たれています。これは、素材である「木」と「漆」が、非常に高い断熱性を持っているからです。

・手には優しく、中身は冷めにくい(魔法瓶のような効果)

・口当たりが柔らかく、金属や陶器のような「冷やっ」とする感触がない

この機能性こそが、寒さが厳しい1月、2月の食卓に漆器をおすすめしたい最大の理由です。

「本物」を見分ける2つのチェックポイント

前回の焼き物が「土か、石か」で見分けられたように、漆器にも明確な違いがあります。 売り場には、大きく分けて以下の3つのグレードが並んでいます。

1.合成樹脂 × ウレタン塗装(安価・食洗機OK・いわゆるプラスチック)

2.天然木 × ウレタン塗装(木の手触り・メンテナンスフリー・経年変化なし)

3.天然木 × 本漆(ほんうるし)(手触りが最高・使うほど育つ・今回のおすすめ)

パッと見ただけでは区別がつきにくいのですが、これらは裏面の品質表示を見れば一目瞭然です。本物の漆器を選びたいときは、以下の2点を確認してください。

・素地の種類: 「天然木」

・表面塗装の種類: 「本漆塗装」

表面塗装が「ウレタン」や「カシュー塗装」となっているものは、漆のような風合いを出した合成塗料です。もちろん便利ですが、「漆器を育てる」という醍醐味を味わうなら、ぜひ「本漆」と書かれたものを手に取ってみてください。

Illust 2

「毎日使う」が最高の手入れ

「本漆は手入れが大変」というのは、実は大きな誤解です。漆という素材は、適度な湿り気を好みます。乾燥しすぎるとヒビ割れの原因になるため、棚の奥で乾燥したまま眠らせておくのが一番のダメージなのです。

毎日使い、汁物の汁気で潤し、洗って水分を拭き取る。このサイクルこそが、漆にとって最高の保湿ケアになります。

"やってはいけない3つのこと"これさえ守れば、実は陶磁器よりも割れにくく、一生モノとして付き合えます。

1.電子レンジの使用(中の木が焦げたり、割れたりします)

2.食器洗い乾燥機の使用(熱風と強力な水圧が苦手です)

3.長時間のつけ置き(水を含んで膨張してしまいます)

普通のスポンジと中性洗剤で優しく洗い、最後に布巾で拭くだけ。使い込むほどに漆が透けて透明感が増し、新品のときとは違う、艶やかな表情へと「経年変化」していきます。

立春に向けて、器を育てる楽しみを

まだまだ寒い日が続きますが、暦の上ではもうすぐ春。新しい季節に向けて、まずは毎日の汁椀を一つ、本物の漆器に変えてみませんか?

手に吸い付くような優しい肌触りと、使い込むほどに育っていく過程は、日々の暮らしを少しだけ丁寧に、豊かにしてくれるはずです。

#Artisan#伝統#歴史#日本文化#技術#伝統工芸#工芸の輪郭#漆器
よろしければ、記事の感想を教えてください
シェア
関連する記事
工芸の輪郭シリーズの記事