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1300年続く、生きた黒 奄美大島・泥染「肥後染色」
2026.05.13
1300年続く、生きた黒 奄美大島・泥染「肥後染色」

肥後 英機・肥後 純一・山元 隆広

それぞれ泥染めに携わり、伝統的な染色技術を継承しながら、受賞歴やアパレル染色、ブランド展開などを通じてその価値を広げている。

泥染

車輪梅を煮出した染液に糸を浸し、その後鉄分を含む泥田に沈める工程を何十回も繰り返して発色させる。素材は車輪梅のタンニンと鉄分を含む泥で、化学反応により独特の黒を生み出す。主に大島紬の糸染めや衣類製品に用いられ、深みのある黒色表現が特徴である。

鹿児島県奄美大島・龍郷町。1300年の歴史を持つ大島紬の要となる工程「泥染め」を、家族で受け継ぐ工房「肥後染色」がある。車輪梅(テーチ木)のタンニンと、鉄分を含む泥の化学反応によって生まれる「生きた黒」。一日の工程を、職人の手仕事とともに映し出す。

自然と人の手が織りなす、奄美の黒

鹿児島県奄美大島・龍郷町。強い日差し、澄んだ水、鉄分を含む大地——この島の自然があってこそ成立する染色技法が「泥染め」だ。1300年の歴史を持ち、世界三大織物のひとつに数えられる大島紬の要となる工程である。肥後染色は、この技を家族で受け継ぐ工房だ。
染料の原料となるのは「車輪梅(しゃりんばい)」、奄美では「テーチ木」と呼ばれる木。山から切り出した原木を切り、砕き、大釜で2日近くかけて煮出す。煮汁はまるで黒いコーヒーのような色と香りを放ち、これが黒の深みを生む下地染めとなる。
染料に布や糸を繰り返し浸して色を重ねていく。一度では決して仕上がらない。職人は手で揉み込みながら、その日の天候や染料の状態を見極め、微妙な色の変化を読み取っていく。大島紬の絹糸はもちろん、Tシャツなど多彩なアイテムも染め上げられる。
そしていよいよ泥田へ。テーチ木に含まれるタンニンと、泥に含まれる鉄分が化学反応を起こし、染料が定着して黒へと変化していく。この工程は時に90回近く繰り返される。膨大な手数を経て生まれる黒は、光を浴びる角度によってわずかに青みや緑みを帯びる、奥行きのある色だ。
最後は澄んだ川で布を清め、自然の恵みをそのまま纏わせる。合成染料では決して出せない「生きた黒」が、こうして織り上がっていく。
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