


1/100ミリの精度で、桐と向き合う
和歌山県紀の川市。紀州桐箪笥の産地として知られるこの地で、1891年に材木業として創業し、130年以上にわたり桐家具を手がけてきた「家具のあづま」。木の選定から製材、加工、塗装仕上げまで、すべての工程を自社で一貫して行う。桐は軽く、湿気に強く、燃えにくい。古くから衣装や財産を守る箪笥の素材として重宝されてきた。一本の桐から、ひとつの箪笥が生まれる——その仕事は、1/100ミリ単位の精度を求められる世界だ。刃を研ぐ音とともに、職人の一日が始まる。
最初の工程は「墨付け」。設計図を描くようにして桐に線を引いていく。一本の線に、職人の経験と勘が宿る。桐は湿度で息づく生きた木であり、その日の状態を読みながら作業は進む。
鋸で切り、鑿で組手を整え、鉋で表面を仕上げると、桐の肌が現れる。「包み蟻組み接ぎ」「包み打ち付け接ぎ」といった伝統的な接合技法は、接着剤に頼らず、木と木が噛み合う強さで箪笥の骨格を成す。木釘がそれを支え、百年経っても歪まない構造をつくり上げていく。
仕上げは「焼き桐」。炎で焼いて煤を落とし、柿渋と砥の粉を塗り重ねて磨き上げる。桐の風合いは時を重ねるほど深まり、暮らしに寄り添う木の記憶となる。
よろしければ、記事の感想を教えてください
シェア



