


鉄と向き合い、手の感覚に託す
山形県山形市。約960年前に発祥したとされる山形鋳物の地で、慶長九年(1604年)に創業して以来、420年以上にわたり鋳物を手がけてきた「菊地保寿堂」。日本刀と同じ日本古来の鉄「和銑(わずく)」を使い、鉄瓶を造ることができる現在唯一の工房である。鋳物づくりは、型をつくる砂の調合から始まる。丸い粒の砂は表面を滑らかにし、角のある砂は強く締まる。砂の配合次第で、仕上がる鉄の表情が変わってくる。山形鋳物の特徴は、この砂づくりにあると言ってもいい。
次の工程は、鉄を溶かすこと。温度と時間の見極めは、すべて職人の感覚に委ねられている。やがて溶けた鉄は型に流し込まれるが、これは一度きりの作業。やり直しがきかない緊張感の中で、職人は鉄の動きを読み切る。
注がれた鉄が冷めるのを待ち、型を外すと鋳物のかたちが現れる。つなぎ目の余分な鉄を削り、注ぎ口を調整して使い心地を整える。鉄瓶の内側にはホーローを施し、その厚さを均一に揃えるのも熟練の技だ。最後に漆を塗り、火で焼き付けて錆を防ぐ。
鉄と向き合う時間は、手の感覚と向き合う時間でもある。本物を残すために、この場所はある。
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