


梶の木から、一枚の和紙が生まれるまで
佐賀県佐賀市・名尾地区。江戸時代から300年以上にわたって紙漉きが受け継がれてきたこの土地で、かつては100軒以上の家が和紙づくりを営んでいた。時代とともに工房は減り、現在「名尾手すき和紙」を掲げるのは谷口家ただ一軒。佐賀県重要無形文化財に指定されている。名尾和紙の原料は、自家栽培した「梶(かじ)」の木。一般的な和紙に使われる楮(こうぞ)に比べて繊維が長く、薄くても破れにくい強靭な紙が生まれる。古くから提灯紙や障子紙として重宝されてきた所以だ。
紙の質を決めるのは、丁寧な下準備にある。梶を蒸して皮を剥ぎ、乾燥させ、大釜で煮る。太く硬い繊維を叩いて細く柔らかくほぐし、刃のついた機械で水と撹拌する。やがて綿のように細かい、和紙の元ができあがる。
「漉き舟」の中で水・原料・ネリを合わせ、いよいよ紙漉きの工程へ。漉き桁を操って均一な厚みに整えるのは熟練の技だ。漉き上げたばかりの紙に水を打つ「落水(らくすい)」では、水流が繊維を動かし、光を透かす美しい模様が描き出される。
ジャッキで締め上げて水分を抜き、鉄板に張り付けてゆっくり乾かせば、名尾手すき和紙の完成だ。
よろしければ、記事の感想を教えてください
シェア



