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木に寄り添う、スウェーデン出身盆栽鉢職人のまなざし(トゥール・ホルビラ)
2026.06.30
木に寄り添う、スウェーデン出身盆栽鉢職人のまなざし(トゥール・ホルビラ)

トゥール・ホルビラ

トゥール・ホルビラはスウェーデン出身の陶芸家。ヨーテボリのシレルスカ芸術学校卒業後、楽焼の先駆者パウラ・リンドフォースに師事し、2009年に自身のスタジオを設立。2017年には常滑で片岡秀美氏(秀峰)に学び、北欧の自然観と日本の盆栽文化を融合した盆栽鉢を制作している。

スウェーデン出身の陶芸家トゥール・ホルビラは、北欧の自然観と日本の盆栽文化を融合した盆栽鉢を制作している。常滑での修業を通じて盆栽鉢の本質を学び、自国文化に根差した表現を追求しながら国際的に活動を続けている。
木に寄り添う、スウェーデン出身盆栽鉢職人のまなざし(トゥール・ホルビラ)

日本文化との出会い、そして盆栽との関係の始まり

私が初めて日本文化に触れたのは幼少期のことです。父は柔道の指導者であり、スウェーデン代表チームの一員でもありました。その父に連れられて道場を訪れたのがきっかけです。壁に掛けられた日本人師範たちのモノクロ写真は、まるで私を見つめているかのようで、そこに流れる敬意と伝統の空気を今でも鮮明に覚えています。

私の家族は、父が一本一本丸太を積み上げて建てた森の中のログハウスで暮らしていました。森の中では、古いトウヒやオークの木々に囲まれ、大きな湿地帯では、酸性の環境に根付いた小さな松に魅了されました。そして青年期、初めての登山で風にさらされた小さな木々──いわゆる山採りの木(ヤマドリ)と出会い、それを掘り起こして持ち帰ったのです。すでに陶芸に取り組んでいた私は、そこから自然な流れで盆栽鉢を自作するようになりました。

常滑の義村陶園・片岡秀美氏(秀峰)の指導のもと、作業を行う
常滑の義村陶園・片岡秀美氏(秀峰)の指導のもと、作業を行う

常滑での修業を通して学んだこと

常滑の義村陶園・片岡秀美氏との協働は、盆栽鉢のさまざまな要素を探求するものでした。鉢の脚部の美しさや乾燥工程、そして日本の陶工たちによって代々受け継がれてきた道具の大切さなど、多くのことを学びました。

しかし何よりも大きかったのは、師のもとで学び、なぜ盆栽鉢がそのような姿をしているのか、その本質を理解できたことです。私たちが作っているのは、実は「作品の半分」に過ぎません。盆栽鉢というのは、木が植えられて初めて完成するからです。つまり、盆栽家の求める要件に応える必要があり、自由な表現の余地は限られています。その事実に気づけたことは、私にとって大きな学びでした。

師匠との印象的なエピソード

今でも制作中に、片岡氏の言葉が頭の中に響くことがあります。まるで背後から見守られているかのように、特に困難に直面したときに思い出されます。

また、師に連れられて訪れた仏教寺院で、日本の鉢の美意識の源流を教えてもらったことも印象に残っています。香炉や大きな石の水盤が、盆栽鉢の形のルーツであると知りました。その経験から、私は自国の文化に根ざした表現を見つける必要があると悟りました。理解できないまま日本のデザインを模倣するのではなく、スカンジナビア文化に根ざした自分の形を追求するべきだと気づいたのです。制約の中にこそ自由があることを、師は教えてくれました。

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盆栽鉢を制作するトゥール・ホルビラさん
盆栽鉢を制作するトゥール・ホルビラさん

プロになって変わった制作との向き合い方

趣味として制作しているときは、一つの鉢にいくらでも時間をかけ、納得いくまで調整することができます。しかしプロとして活動するには、安定した制作ラインと自分に合ったペースが必要です。

私は量産の道は選ばず、高価格帯の一点物を作り続けることにしました。それによって競争の激しい業界の中で、自分の立ち位置を見つけることができました。同時に、優れた職人でありアーティストであるだけではプロとしては不十分で、オンラインショップの運営、写真撮影、マーケティングやPR、さらには財務管理や将来を見据えた経営も必要だと実感しました。すべてを自分で担うからこそ、迅速な意思決定と市場への柔軟な対応が可能になっています。

スウェーデンでの事業展開について

スウェーデンおよび北欧では、盆栽市場は非常に小規模です。成長期が短く、育てられる樹種も限られているため、早い段階で海外市場に目を向けることを決めました。

北欧的な自然観に影響を受けた、粗さや自然らしさを大切にした私のスタイルは、アメリカ北部やカナダの顧客に支持されています。また、南ヨーロッパやアメリカ南部向けには、花木文化に合う色彩豊かな鉢のシリーズも展開しています。一方、日本市場向けには豆鉢を制作し、東京の店舗を通じて販売しています。

作品名:Thor Holvila 2604-07。植えた後に木の葉を映し出すような、枝や小枝の影のように釉薬を塗った盆栽鉢。
作品名:Thor Holvila 2604-07。植えた後に木の葉を映し出すような、枝や小枝の影のように釉薬を塗った盆栽鉢。

私にとっての盆栽の魅力

スカンジナビアには、木は神聖な存在であり、神々と直接つながっているという古い伝承があります。スウェーデンの庭には「ケアツリー」と呼ばれる木があり、その根元には家族の魂が宿ると信じられてきました。私たちは供物を捧げ、その木を代々守り続けてきたのです。

私にとって木は理想の存在です。大地にしっかりと根を張り、光に向かって伸びる、強く、芯のある、誇り高き存在です。盆栽においては、木が完璧さを体現し、鉢は人間を映し出すものだと考えています。それは人間の不完全さまで含むものです。自然と競うのではなく、その秩序の中で自分の位置を理解することが大切だと思っています。私がよく言うように、「木は神が作り、鉢は人が作る」のです。その関係性を忘れてはいけません。

高尾駒木野庭園の盆栽展にて、出品した際の一コマ。
高尾駒木野庭園の盆栽展にて、出品した際の一コマ。

日本の工芸、職人、ものづくりに触れて感じたこと

日本の工芸、職人、そしてものづくりに対して、私は深い敬意を抱いています。洗練された技術だけでなく、規律、継続する力、そして変化を受け入れながら未来を信じる姿勢は、特に強く心に残っています。

西洋では、アーティストとして価値を得るために既存のルールを壊すことが求められます。しかし日本での経験から、大きく飛躍するためには、まずしっかりとした基盤となる技術が必要だと学びました。何でも早く学ぼうとし、時間をかけることを避けがちな現代において、この姿勢はより重要だと感じています。

もともと自分の中にあった考えではありますが、日本での経験によってさらに確信へと変わりました。伝統に片足を置きながら、もう片方で未知に踏み出す──それが今の私の進み方です。

将来的には、日本で大規模な展示を開催し、日本の美意識に根ざしながら築いてきた自分の作品を紹介することが夢です。また、自身の盆栽も展示できるレベルまで育て上げ、スウェーデンの人々にこの素晴らしい芸術を伝えたいと考えています。

トール・ホルヴィラさんのWebサイト:https://www.holvilabonsaipot.com

YouTube:https://youtu.be/vjTDhIBkm1Y?feature=shared

オンラインストア(日本):https://yukimono.jp/collections/holvila

#日本文化#伝統工芸#技術#歴史#盆栽鉢#日本の美#リレーコラム
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