



30年以上にわたり日本での展開を続けてきた、イギリス発のザ・コンランショップが手がける新企画「Katachi」は、日本のものづくりに着目した取り組みだ。暮らしに寄り添う「真に良いもの」を提案。会場では製品だけでなくヒノキの丸太やカトラリーの廃材など「素材の原型」も展示され、プロダクトの背景まで生き生きと伝えている。
なぜザ・コンランショップは、ものづくりの「手触り」や「背景」までを伝えようとするのか。プロダクトの奥深い魅力と、空間でのリアルな体験について、株式会社コンランショップ・ジャパンの小泉絵美さんに話を伺った。

ヒノキの丸太とカトラリーの廃材が放つ「空間の体験」
オンラインで手軽にあらゆるものが買える時代において、実店舗が果たすべき役割とは何か。今回の展示では、その問いに対するザ・コンランショップの一つの答えが提示されている。
「インターネットで手軽にものを購入できる時代だからこそ、店舗では、素材が持つリアルな質感や手触りを実感していただくことが重要だと考えています。だからこそ今回は、完成されたプロダクトにとどまらず、その製作背景やプロセスまで体感していただけるよう趣向を凝らしました」
たとえば、ステンレスを打ち抜いてカトラリーを作ったあとの「廃材」や、オリジナル家具に使用されるヒノキの丸太そのものを展示している。
「ダンボール箱にどっさりと詰め込まれて届いたヒノキの丸太は、売り場全体へ瞬時に芳しい香りを広げ、圧倒的な存在感を放ちました。それは木の生命力をそのまま宿した、良い意味でどこまでも無垢でリアルな素材でした」
画面越しでは伝えることのできない匂いや重み、そして素材が形になるまでの試行錯誤のプロセス。店舗という空間で直接それらに触れる体験こそが、プロダクトへの深い理解と長く大切に使いたいという気持ちを生み出すのだ。


視覚と触覚の心地よいギャップが生む驚き
会場に並ぶ数々のプロダクトの中でもひときわ独特の存在感を放っているのが、ZOZO NEXTが展開する漆器「URUSHICA」だ。
「弊社スタッフが『TOKYO PROTOTYPE』での展示を見たことがきっかけとなり、URUSHICAを知りました。最初に実物を見た際、その深い色合いや美しい艶は、歴史ある伝統的な漆器と見まがうほどだったと聞いています。一方で、手に取ってみるとその軽さに思いがけず驚かされます。耐熱樹脂を活用することで、木材では表現が困難な薄さやフォルムを見事に形作っているのです」
一見すると伝統的な漆器そのものだが、耐熱樹脂を使用しているため電子レンジや食洗機にも対応している。現代の慌ただしい暮らしの中で時短につながる機能性は、消費者が手に取る大きな理由になる。しかし、URUSHICAの魅力はそれだけではない。
「見た目は機械製のように思えますが、実は職人の手仕事によって一つずつ丁寧に塗り上げられています。優れた機能性を備えつつも、手作業ならではの熱量や情熱が細部にまで込められているのです。こうした背景を知ることで、単なる便利な道具という枠を超え、より一層の愛着を感じていただけるでしょう」

作り手の現場に足を運び、「自分の言葉」で背景を届ける
実店舗でしか得られない価値は、素材の匂いや手触りといったものだけではない。同店では、作り手の思いを消費者に直に届ける「伝え手」としての役割も徹底している。
「説明文を読むよりも、スタッフ自身が熱意を持って自分の言葉で伝える方がお客様の心に響きます。そのため代官山店などでは、スタッフが実際に作家の工房や工場へ赴き、ものづくりの背景を自らの目で確かめ、本当に良いと思うものを厳選しているのです。さらに、作り手の思いを深く把握するための社内勉強会を開き、充分な知識を蓄えた上で接客に臨んでいます」
そうした背景を持つ代表的なプロダクトとして、オリジナル家具の存在がある。長野県軽井沢を拠点とするデザイナーが手掛けた杉材の家具や、創設者サー・テレンス・コンランの孫であり日本で活動するフィリックス・コンランが、日本のヒノキを使用してデザインした家具などだ。
「これらの家具はオープンシェルフや壁面設置、空間の間仕切りなど、現代の住環境に合わせた柔軟な設計が特長です。デザイナーの思いや素材のストーリーを熟知したスタッフが接客を行うことで、具体的な活用法まで含めた真実味のある提案が可能となります」

「ちょうどいい価格帯」と遊び心がつなぐ、次の世代への入り口
ザ・コンランショップの平均的な客層は40代から50代が中心だが、今回の企画には、20代や30代の若い世代にもブランドの価値を知ってもらいたいという思いも込められている。
「若い世代の方々に向けて『ザ・コンランショップ』に関心を持ってもらう機会を作ることも、重要な狙いの一つです。一例として今回のKatachiでは、伝統工芸品であるこけしにベースボールキャップをあしらったユニークで親しみやすい商品なども出品しています。気負わすことなく手に取りやすい価格帯で展開することにより、誰もが気軽に訪れられるようなアプローチを整えています」
高いから良い、伝統的だから良いという固定観念に縛られることなく、現代の暮らしに自然に溶け込み、次の世代へ受け継がれていくプロダクトを見極める。
作り手の思いや素材から発せられる生の息遣いに触れることで、シンプルなプロダクトはぐっと愛着の湧く存在へと変わる。ザ・コンランショップが提案する「Katachi」は、ただものを売るだけでなく、ものづくりの背景と私たちの暮らし、そして未来をつなぐ重要な架け橋となっている。
ザ・コンランショップ「Katachi」
◾️開催期間
9月18日(金)~10月18日(日)まで
※ザ・コンランショップ 丸の内店のみ、10月15日(木)まで
◾️開催店舗
ザ・コンランショップ 東京店、ザ・コンランショップ 丸の内店、ザ・コンランショップ 代官山店、オンラインショップ
※店舗により開催期間および取り扱いブランドが異なります。




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