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「Made in Japan」の魂を発見(ジョナタン・バーナベ)
2025.05.26
「Made in Japan」の魂を発見(ジョナタン・バーナベ)
「Made in Japan」の魂を発見(ジョナタン・バーナベ)

2015年、結婚を機に、私の新しい人生が始まりました。静岡に移り住み、義実家が営む「株式会社水鳥工業」という下駄づくりの世界へ足を踏み入れました。静岡の伝統的な地場産業であるこの工場は、88年の歴史を誇ります。

正直なところ、来日以前の私は下駄についてほとんど知りませんでした。しかしmizutoriの下駄は私の想像をはるかに超えるものでした。世代を超えて受け継がれてきた木の温もりと、現代の感性に響く革新的なデザイン、そして何より、驚くほどの履き心地のよさ。

創業初期の工場
創業初期の工場

初めて足を通した瞬間、足全体が優しく包み込まれるような感覚に衝撃を受けました。この体験が、私の日本の職人技への強い興味と好奇心を呼び覚ましたのです。

日本語を猛勉強し、日常会話に困らない程度になった頃、営業担当として水鳥工業に入社しました。全国各地の職人展を巡るうち、地域ごとに息づく日本のものづくりの奥深さに魅了されました。

繊細な絵付けの陶器、緻密に織り上げられた織物、精巧に作られた木工品──どれも匠の手から生み出される多彩な作品であり、日本の文化と豊かな歴史を雄弁に物語っています。

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特に感銘を受けたのは、家族経営の小さな工房で働く職人たちの真摯な姿勢です。彼らは決して妥協せず、製品の細部にまでこだわり、完璧を追い求めます。

この揺るぎない情熱こそが、世界に誇る「Made in Japan」の品質を支える礎だと確信しました。地方の小さな町工場にまで根付いているこの職人気質が、日本という国全体の価値を高めているのです。

職人の手によって生まれた製品は、日常生活に利便性をもたらすだけでなく、それを手にする喜びや、使うたびに心を潤す美しさを与え、人々の暮らしに鮮やかな彩りを添えてくれます。

アメリカで技術畑を歩んできた私にとって、素材選びから完成に至るまで魂を込めて手仕事を重ねる日本のものづくりは未知の世界でした。

その洗練された技と精神に触れ、仕事と技術、そして一つの道を極めることの真の意味について深く考えさせられました。

現在私は家業の下駄販売に加え、主に欧米からの観光客に向けてツアーディレクターとしても活動しています。

観光を通して、日本の伝統工芸の魅力を直接伝えることができるこの仕事に、大きな誇りとやりがいを感じています。

日本の職人技とそこに宿る精神を目の当たりにした訪日客は皆、深い感動を覚えます。その姿を見るたびに、日本のものづくりを世界へ届ける意義を再認識するのです。

しかし、日本の伝統工芸は深刻な後継者不足に直面しています。長年技を磨き上げてきた名工が高齢化する一方で、その後を継ぐ若い世代が現れない現状に、私は強い危機感を抱いています。このままでは、長い年月をかけて培われた貴重な技術と文化遺産が失われかねません。

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それは日本文化だけでなく、世界の文化多様性の観点からも計り知れない損失です。

若い世代が日本のものづくりの真価と、その根底にある職人魂を再発見し、誇りを持ってこの素晴らしい伝統を受け継ぎ、未来につなげていってほしいと心から願っています。

視野を広げれば、それを行えるのは日本人に限りません。日本の伝統工芸に感動し、その意義を理解した人であれば、国籍を問わず誰でもよいのです。

大切なのは、日本のものづくりの精神を絶やさないこと。そして、その核となる精神を未来につなげていくために、必要な変化や進化を受け入れることだと考えます。

日本のものづくりには、長い歴史の中で培われた文化と、職人たちの揺るぎない精神が深く刻まれています。次の世代がこの尊いバトンをしっかりと受け取り、世界に名高い日本の素晴らしい文化遺産を永遠に継承していくことを、私は切に願っています。

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#Artisan#職人#静岡#日本文化#伝統工芸#技術#歴史#下駄#リレーコラム
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