



現代の名工に選ばれて
東京都から「東京マイスター」を受賞したのち、畠山さんは現代の名工としても表彰されました。しかし本人は、「僕でいいのかな」と戸惑いを覚えたといいます。
「私の仕事は工芸作品というより、車のエンブレムや社章、校章といった実用品が多いんです。そういうもので現代の名工に選ばれていいのかな、という気持ちはありました」
それでも、自らが続けてきた仕事が評価されたことに、確かな手応えを感じました。特に都の「東京手仕事」で都知事賞を受賞した経験は、大きな自信となりました。

白をいかに美しく出すか
七宝焼の色彩表現は、釉薬の性質と焼成の加減で決まります。中でも、もっとも難しいのが「白」です。
「白がきれいに出るかどうかが作品を左右します。少しでも不純物が入ると黒い点が出たり、黄色っぽくなったりしてしまう。だから検品も慎重に行うんです」
透明感を保ちながら真っ白に仕上げるのは至難の業。数え切れない試行錯誤を重ねて培った技術の結晶でした。
独自に編み出したプリカジュール
七宝焼には「プリカジュール」と呼ばれる技法があります。透明な釉薬を使い、ガラス細工のような透け感を出すものです。もともとはフランスで考案されましたが、畠山さんは誰にも習わず自己流で取り組みました。
「普通は平らな面に施すのですが、私は斜めに立てかけて焼く方法を編み出しました。台を使わず、少しずつ強度を上げながら焼く。これをやっているのは多分私だけだと思います」
その技法は指輪やアクセサリーなど立体的な作品にも応用でき、ジュエリーブランドから依頼を受けるきっかけにもなりました。


職人の誇り:同じ品質を量産すること
七宝焼の世界には一点ものの芸術作品を追求する作家もいますが、畠山さんは「職人」としての誇りを大切にしています。
「いいものを1つ作るのは比較的簡単です。でも、同じ品質のものを何十個、何百個と揃えて早く作るのは本当に難しい。そこに職人の価値があると思っています」
作品づくりにおいては、精度とスピードの両立が常に求められます。畠山さんの仕事は、その両方を実現するからこそ高く評価されてきました。
挑戦を続ける姿勢
畠山さんの根底にあるのは「まずはやってみる」という精神です。できるかどうかを考える前に挑戦し、失敗すればやり直す。そうした積み重ねが独自の技法を生み出し、新たな作品へとつながってきました。
「失敗してもいい。失敗してもまた作ればいい。それが次の技術につながるんです」
もっとも基本的な「白」の表現から、独自のプリカジュール技法まで。畠山さんの探求は、東京七宝という伝統に新しい可能性を広げている。

(次回は、変化する業界環境の中で畠山さんが見出した仕事の新しい方向性、そして次世代への継承についてお送りします。)










