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鯖江で作られる100%メイドインサバエのアイウエア:NOCHINO OPTICAL(ノチノ オプティカル)
2024.11.20
鯖江で作られる100%メイドインサバエのアイウエア:NOCHINO OPTICAL(ノチノ オプティカル)

福井県鯖江市

NOCHINO OPTICAL
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鯖江で作られる100%メイドインサバエのアイウエア:NOCHINO OPTICAL(ノチノ オプティカル)
イタリアや中国、韓国などと並び、一大メガネ生産地である福井県。福井市や鯖江市を中心に、日本製メガネフレームの約95%を生産していると言われている。世界に誇る産地となったきっかけは、1983年にチタン製のメガネを開発したことだそうだ。
アイウエアブランド「NOCHINO OPTICAL(ノチノ オプティカル)」の製品は、鯖江市の職人がすべてハンドメイドで作り上げているという。
今回は、鯖江市でメガネ作りが根付いた背景や、同ブランドのアイウエアの製作工程、さらに鯖江市が直面しているメガネ業界の課題について、同ブランドの菅はな子さんにお話を伺った。

一大産地で生まれる高クオリティなアイウエア

まず、鯖江市でメガネの生産が盛んになった経緯を教えてください。

福井県でメガネの生産がはじまったのは100年以上前のことです。雪が降る福井県では、11月から3月頃まで農業ができません。「なんとか暮らしをよくしよう」と考えた鯖江市出身の増永五左衛門(ますながござえもん)という方が、福井県に職人を招き、農家の内職としてメガネ生産をはじめました。

当初は福井市からスタートしましたが、増永五左衛門の奥さんが鯖江市の出身だったこともあり、やがて鯖江市にも内職としてのメガネ生産が広まったと聞いています。

また、大阪府と福井県は地理的に近く、日本海側特有の湿気が多い気候がメガネ作りに適していたようです。メガネの製造には綿花を使用した素材が多く用いられるため、乾燥しすぎない環境が求められます。福井県の気候が素材の保管にも適していたことも、メガネ産業が根付いた背景にあります。

福井県が世界的なメガネ産地として知られるようになったのは、非常に硬く加工しにくいチタンを使用し、ろう付けしてメガネを作ったのがきっかけだと聞いています。当時のメガネは合金製で重かったため、軽くて耐久性のあるチタン製メガネを作る技術力が注目され、福井県は一大産地へと成長していきました。

ノチノ オプティカルのアイウエア製作において、鯖江市を選んだ理由を教えてください。

当ブランドでは、“いい商品を作ってお客様にお渡し、喜んでもらう”ことを大切にしているので、製品のクオリティコントロールをとても重要視しています。ブランドに携わる私たち自身が「いい」と思える製品でないと、自信を持ってお客様におすすめすることができません。ノチノ オプティカルが目指すクオリティを実現できるのは、やはり鯖江市の職人さんしかいないと感じました。

さらに、“熟練の職人さんが作ったアイウエア”は、お客様にとっても大切なものになるだろうと考えました。

また、近年は最終工程だけ日本で行っても「メイドインジャパン」と表記できるため、「どこまで日本で製造すればメイドインジャパンと言えるのか」という問題があります。そんななか、ノチノ オプティカルは100%メイドインジャパンにこだわり、日本産の素材を使用し、すべての製造工程を国内で行っています。

費用を抑えようとすると海外での製造も選択肢に入りますが、私たちは純粋な日本製の製品作りにこだわっています。鯖江市の職人さんの力を借りて、とてもいい形で製品作りができています。

ノチノ オプティカルでは多様なモデルを展開されていますが、企画の際に重視していることはありますか?


“普遍的なもの作り”にフォーカスしています。皆さんも製品を見たときに「この部分がなければ欲しかったのに」と思った経験があるのではないでしょうか。ノチノ オプティカルでは、そういったことをなくすために、プラスのオリジナリティを追加するのではなく、“どれだけシンプルにできるか”や、“とにかくベーシックにすること”を念頭に置いてデザインしています。

実は、ブランドを立ち上げた当初は新しいモデルを出すつもりはなかったのですが、お客様からのリクエストを受けて新しいモデルも作るようになりました。

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職人の手作業だから生まれる“アジ”

アイウエアが作られる工程について教えてください。

デザイン・設計から組み立てまで、全部で200以上の工程を経て出来上がります。基本的にメガネは分業制で作られるので、ノチノ オプティカルのアイウエアには、メガネ職人として70年の経験を持つ大ベテランの職人さんをはじめ、たくさんの職人さんが関わっています。

近年は、機械のボタンを押せば同じ形のものを効率よく大量に作ることも可能ですが、ノチノ オプティカルではそれを求めていません。一つひとつ異なる表情を持つ、“ヴィンテージのようなアジのある製品”をお客様に届けたいと考えています。それを実現できるのは、機械ではなく職人の手だからです。

人それぞれ顔の形や鼻の高さ、耳の位置が異なるので、メガネは汎用品ではありません。職人さんが作るのは半製品であり、店舗でお客様の耳や鼻の形に合わせてフィッティングして、はじめて完成品となります。ノチノ オプティカルの店舗にはフィッティングのスペシャリストもおり、本当に多くのプロの手を経て製品が完成していきます。

たくさんの製作工程があるなかで、特にキーとなる工程は何でしょうか?

半製品の仕上げとして行う、「磨き」だと思います。職人の手の感覚で行う必要があるので、メガネ製造に30年携わっている方でも「難しい」と言っていました。

また、ノチノ オプティカルはメガネの両端にある“鋲(びょう)”の付け方にも特徴があります。大量生産では機械で行うことが多いのですが、あえて昔ながらの作業方法を採用し、職人が一つひとつ型からくり抜いて取り付けています。

産地全体で、メガネ製造に携わる方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか?

鯖江市の人口は約6万人で、現在は7,000人ほどがメガネ関係の仕事をしていると聞いています。職人さんは、若手からベテランまで幅広くいます。メガネ生産は分業制で行われますが、工場によって職人さんが担う業務範囲は異なり、1つの工程を極めている方もいれば、複数の工程を担当する職人さんもいます。

ただ、どの業界もそうだと思いますが、メガネ産業に携わる人の数も減ってきています。最盛期は30〜40年ほど前で、その頃は約2万人がメガネ関係の仕事に就いていました。鯖江市の人口は今とあまり変わらないので、当時は3人に1人がメガネの仕事に携わっていたようです。

工場の倒産や生産拠点の海外移転により、現在は最盛期の3分の1ほどになっています。

職人を目指す人を増やすような仕組み作りも

人手が減っているとのお話でしたが、その理由は何だとお考えですか?

いろいろな背景がありますが、鯖江市の場合は後継者不足が問題になっているそうです。薄暗い場所で製造しますし、削りかすなども飛びます。いわゆる3Kと呼ばれる職場環境で、若い人たちがこの業界に入りにくいのが現状です。

また、北陸地方は産業が多く、福井県ではメガネのほかにも繊維や半導体の企業があり、特に半導体工場は給与が高いんです。働き手は給与が高く、きれいな工場を選ぶ傾向があるので、メガネ産業は人手不足が深刻化しています。

通常であれば3〜4ヶ月ほどで仕上がる製品が、最近では7〜8ヶ月かかることもあるそうです。メガネ生産は分業制で、どこかの工場で作業が遅れると全体の生産が止まってしまうからです。人手不足に加え、材料の手配が追いつかないことも一因になっているそうです。

工場によってはマンション代を全額負担するなどして、働き手の金銭的な負担が減るよう工夫をしているところもあるようですが、それでも人手はなかなか集まりません。メガネ業界はメーカーの立場が弱くなりがちなので、メーカーと卸業者がWin-Winの関係を築けるようになればと思います。

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御社の今後の展望を教えてください。

中国でノチノ オプティカルの店舗を展開したいと考えています。ノチノ オプティカルでは“アジアンフィット”のアイウエアを展開しているので、それを世界に広げたいのです。世界にチャレンジすることで、私たちの製品やブランディングがどこまで通用するのかを試し、いい成果が出るようにしたいと考えています。

また、将来的に資金的な余裕ができたら、メガネの製造体験ができるワークショップなどを開催したいと考えています。鯖江市を訪れたことがない方も多いでしょうし、メガネがどのように作られるかを知らない方もいるでしょう。将来、職人を目指す人が増えるよう、興味を持ってもらえる仕組みを作っていけたらと考えています。

Text by 奥山 りか

#Artisan#鯖江#職人#眼鏡#日本文化#技術#歴史
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